「更年期」とは加齢に伴い性ホルモンが減少した状態で、「更年期障害」はこの性ホルモンの減少によって種々の症状が出現する事を言います。
今まで更年期と言えば女性の問題であり、「男性には更年期はない」と考えられてきました。
しかし近年、女性と同様に男性にも性ホルモン減少に由来する「更年期障害」が存在することがわかってきました。
男女ともに性ホルモンの分泌は20~30歳代にピークを迎え、その後男性はなだらかに男性ホルモン(テストステロン)の分泌が減少するのに対し、女性は40才後半から50才代の間に急激な性ホルモン(エストロゲン)の減少が起こります。このためホルモン減少による更年期障害の発症の仕方は男女間で大きく異なり、男性更年期は女性の更年期に比べ症状の出現が目立ちにくいという特徴があることから、これまであまり注目されることがなかったのです。
男性更年期の症状は、
(1) 不眠、不安やイライラ等の精神神経症状
(2) 勃起不全や性欲低下等の性機能症状
(3) 頻尿、殘尿感等の泌尿器症状
以上の3大症状の他、女性の更年期と同様に手足の痺れ、発汗、動悸、食欲不振、肩こり、易疲労感や倦怠感等の全身症状も認められます。
社会的な責任が大きくなる40~50代の男性のうつ傾向や慢性疲労などは、「ある程度しょうがないことだ」と考えられてきましたが、この時期、女性の更年期障害の症状と似た症状を伴っているケースも多く、様々な研究・調査の結果、「男性更年期」という概念が生まれ、これまでうつ病と診断された人の中にかなりの男性更年期が含まれていることもわかってきました。
「男性更年期」自体は「男性ホルモンが減少している」という状態であって病気ではありません。重要なのは、「更年期障害(性ホルモン減少に伴う症状)」があるかどうかということで、特に自殺につながることもある抑うつ症状を認める場合は注意が必要です。また日々の生活に支障をきたすような症状がある場合も、適切な治療を行うことで見違えるように生き生きとした生活を送れるようになることもあります。
次回は男性更年期の診断・治療についてお話しします。
カテゴリ:アンチ・エイジングのこと 2008.04